食物や水の放射能汚染から身を守るために大切なこと

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内部被ばくの経路

こんにちは、さち です。

日頃はPC関連について書いているこのブログですが
また放射線について書きていきたいと思います。

私は第1種放射線取扱主任者という資格を持っています。
地震により起きた福島原発の事故で大変な今
自分にできることは何だろうかと考えた結果
放射線についての情報をブログに書くことで
より多くの人に正しい知識と対処法を知ってもらうことではないかとなりました。

放射線の怖さを知ることはとても大切ですが
怖がっているだけでは自分の身を守ることはできません。
正しい知識を身につければ正しい身の守り方を覚える事にもなります。

今回もなるべく専門的な言い回しはせずに分かりやすく書きますので
今自分が置かれている状況を正しく判断し
適切な対処法を取って頂けたら幸いです。

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まえおき

この記事を読み進める前に
先に前回の記事を読むと内容がより理解しやすくなると思います。
(放射線の基礎知識について前回で解説しています)

また、前回の記事でも書いたことですが
「放射能」とは本来「放射線を出す能力」を意味する言葉です。
そのため「放射能汚染」は正しい言葉ではありません。

しかし、この言葉はすでに一般に浸透しているため
「放射能汚染 = 放射性物質で汚染された状態」という意味で
この記事の中でも使っていきます。

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食物の放射能汚染で起きる問題

私たちは食物を食べて生きています。
もし、その食物が放射能汚染されていたら
体内に放射性物質(放射線を出す物質)が取り込まれてしまいます。

放射性物質を体内に取り込んでしまうと
身体の内側から放射線の被ばくを受ける状態が起こります。
このような被ばくを「内部被ばく」と言います。

食物の放射能汚染ではこの「内部被ばく」が問題となるのです。

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内部被ばくの問題点

内部被ばくで問題になるのは主に以下の3つです。

  1. 放射性物質が体外へ出るまで被ばくが続く
  2. 外部被ばくより被ばく量が多くなる
  3. 身体の一部分が集中的に被ばくを受ける

文字だけでは分かりにくいと思うので
次項以降、これらをもう少し詳しく見ていきましょう。

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放射性物質が体外へ出るまで被ばくが続く

外部被ばくは、三原則の「時間」「距離」「遮へい」により
なるべく被ばくが減るように気をつけることができましたが
内部被ばくではこれらを実行できません。

一度体内に放射性物質が入ると
排泄などにより放射性物質が体外へ出るまで待つしかありません。

排泄などにより体内の放射性物質の数が半分に減るのにかかる時間を
「生物学的半減期」と言います。

前回の記事で出てきた「半減期」とは全く別のものなので注意。
「半減期」は放射性物質が放射線を出すことで
別の元素へ変化して数が減ります。
対して、「生物学的半減期」は排泄などにより
放射性物質自体が体外へ出ることで数が減ります。

生物学的半減期と区別するために
「半減期」を「物理学的半減期」と言うこともあります。

生物学的半減期は放射性物質(元素)によって異なります。
簡単に言えば、「ヨウ素」「セシウム」「プルトニウム」は
すべて生物学的半減期が違うということです。

「半減期」が「生物学的半減期」よりも非常に短い場合は
放射性物質が体外へ出る前に
半減期によって放射性物質自体がほぼなくなります。

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外部被ばくよりも被ばくが多くなる

放射線は放射性物質から球状にあらゆる方向に出ています。

外部被ばくの場合
被ばくに関与するのは下の図でいう赤い放射線のみです。
放射性物質から離れればさらに減ります。
外部被ばくに関与する放射線

しかし、内部被ばくの場合
放射性物質の周りはすべて身体なので
出てくる放射線すべてが被ばくに関与します。
内部被ばくに関与する放射線

このため、同量の放射性物質から被ばくを受けたとしても
外部被ばくと内部被ばくでは被ばくの量が大きく変わってきます。

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身体の一部分が集中的に被ばくを受ける

放射性物質の正体は不安定な元素であるというのは
前回の記事で書きました。

身体は生きて行くために色々な元素を必要とします。
例えば「カルシウム」で考えてみましょう。
カルシウムを摂取すると骨に運ばれていきますよね。

しかし、そのカルシウムが放射能を持っていたとしたら?
放射性物質は骨に集まっていきますよね。
言いかえれば、放射性物質が濃縮されるわけです。
結果、骨が集中的に被ばくを受けるのです。

外部被ばくでは局所的に被ばくすることは少ないですが
内部被ばくではこのような局所的な被ばくが問題となります。

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内部被ばくが問題となる元素

食物の放射能汚染のニュースで
「ヨウ素131」「セシウム137」「プルトニウム239」「ストロンチウム90」
などの名前を聞いたことがあると思います。
これらが内部被ばくが問題となる元素です。
これらの元素について少し詳しく見ていきたいと思います。

ヨウ素131(I-131)

物理学的半減期: 約8日
生物学的半減期: 約138日
集まる部位: 甲状腺 (→甲状腺とは?
1万Bq(ベクレル)のヨウ素131の経口摂取よる内部被ばくは0.22mSv。

ヨウ素は気体になりやすい性質があり
呼吸による内部被ばくが起きる危険性もあります。
体内に入ると甲状腺に集まる性質があります。

安定したヨウ素を大量に摂取すると
先に安定したヨウ素が甲状腺に集まり
放射性のヨウ素131は甲状腺に集まりにくくなります。
イス取りゲームをイメージすると分かりやすいかもしれません。
そのため、ヨウ素131による内部被ばくが問題となる場合は
専用の薬(安定ヨウ素剤)が投与されることがあります。

海藻類(特にコンブ)にもヨウ素が多く含まれていますが
食べても効果はあまり期待できないと言われています。
しかし、まったく食べないよりは多少マシだと思います。

既に巷でも言われていますが
原料がヨウ素とは言え、うがい薬やヨードチンキなどを飲むのは
健康上よくないので絶対にしないで下さい。
放射線以外の原因で身体を害していては本末転倒です。

セシウム137(Cs-137)

物理学的半減期: 約30年
生物学的半減期: 約70日
集まる部位: 筋肉
1万Bq(ベクレル)のセシウム137の経口摂取よる内部被ばくは0.13mSv。

融点が28度で常温で液体となることもある金属です。
体内ではカリウムに似た動きをして全身に広がり
筋肉に多く集まる性質があります。

セシウム137による内部被ばくが問題となる場合は
これを体外へ出す効果を促すため
プルシアンブルー(顔料)による治療をすることがあります。

他にも「セシウム134(Cs-134)」も存在しておりこちらは
物理学的半減期: 約2年
生物学的半減期: 約70日
集まる部位: 筋肉
1万Bq(ベクレル)のセシウム134の経口摂取による内部被ばくは0.19mSv。

プルトニウム239(Pu-239)

物理学的半減期: 約2万4000年
生物学的半減期: 約50年(骨)、約20年(肝臓)
集まる部位: 骨、肝臓
1万Bq(ベクレル)のプルトニウム239の経口摂取よる内部被ばくは0.09mSv。
1万Bq(ベクレル)のプルトニウム239の吸入による内部被ばく83mSv。

α線を出し、かつ生物学的半減期が長いため
プルトニウムによる内部被ばくは特に気を付ける必要があります。

α線は短距離で大きくエネルギーを失う特性があるため
外部被ばくではあまり問題にはなりませんが
内部被ばくではこの特性が原因で逆に被ばくが多くなります。

経口摂取(食物から入る)をした場合と
吸入(呼吸から入る)をした場合とで被ばく量に大きな違いが出ます。
これは消化器官より肺の方がプルトニウムを吸収しやすいためです。
吸入では肺の被ばくも起こりこちらも問題となります。

消化器官からはほとんど吸収されず99%以上が排泄されます。
吸入(呼吸から入る)をしないようにすることが重要です。

ストロンチウム90(Sr-90)

物理学的半減期: 約29年
生物学的半減期: 約50年
集まる部位: 骨
1万Bq(ベクレル)のストロンチウム90の経口摂取よる内部被ばくは0.28mSv。

カルシウムに似た動きをするため
体内に入ったストロンチウムの多くは骨に集まります。
一度骨に取り込まれると中々排泄されないため
長期間の内部被ばくが起こります。

ストロンチウム90は化学的な理由から
原発事故での放射能汚染に関与する量は
ヨウ素131やセシウム137と比べて少ないと言われています。

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内部被ばくを防ぐには

内部被ばくを防ぐには

食物や水の放射能汚染、呼吸による内部被ばくを防ぐには
上の図ような方法があります。
家の中に放射性物質を持ち込まないということが大切です。

外出時にはマスクなどをするようにしましょう。
マスクはなるべく目が細かいものを選ぶとよいです。
また、傷口からの侵入を防ぐために肌の露出は控えましょう。
内部被ばく対策は、花粉対策をイメージすると分かりやすいかも。

内部被ばくを防ぐには

放射能汚染された食物を口にしないのは大前提です。
農家の方が気の毒ではありますが
野菜などの出荷が停止されているのもこれが理由です。

放射能汚染が不安に感じる食材はよく洗いましょう。
可能であれば洗剤を使って洗ってもよいと思います。

また、昨今報道されている水道水に含まれるヨウ素131についてですが
乳児用の基準値が大人より厳しく定められているのは
「成長途中の身体は放射線から受ける影響が大きいから」という理由です。
前回の記事でも書いた内容なので詳しくはそちらを参照)
妊婦の方も飲まない方がよいというのは胎児への影響を考えてのことです。

東大病院放射線治療チームによると
水道水に含まれるヨウ素131は水を沸騰しても飛ばすことはできず
家庭用浄水器でも濾過することは困難との見解を出しています。

一番確実なのは
水を汲んで置いておき半減期による減弱を待つことのようです。
ヨウ素131の放射能は1日置けば約8.3%、2日置けば約16%弱くなります。
ただし、あまりに日にちを置き過ぎると
水自体が傷む(腐る)こともあるので気をつけて下さい。

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あとがき

記事作成にあたり下記サイトの資料等を参考にしました。

→ 原子力資料情報室
→ Biological Half-life(英語)

また、記事作成にあたり
下記サイトにある資料の一部を引用(一部編集)しました。

→ JNES 独立行政法人 原子力安全基盤機構

関連記事

→ 放射線から身を守るために大切なこと

コメント

  1. おっさ より:

    例え少量であっても気分的にかなり嫌ですね。
    「 生物学的半減期 」 憶えました!
    なるべく便秘せずに速やかに排泄するよう心がけたいです(笑)

    ヨウ素は浄水器でも沸かしても駄目だけれど、半減期が短いから汲み置きと言う手があるのですね?
    セシウムは、『 28度で液体になる金属 』 だから沸かせば何とかなるの?
    金属なら浄水器で対処できるのでしょうか?

  2. さち より:

    便秘には気をつけて下さいね(笑)

    セシウムは融点は約28度ですが沸点は600度以上です。
    水を沸かしても100度までしか上がりませんから
    セシウムは抜けないと思います。
    反対に沸騰することで濃縮することになってしまいそうです。

    家庭用浄水器で少しは除去できるかもしれませんが
    あまり効果はないと思います。
    ゼオライトに一定の効果があると言われていますね。

  3. おっさ より:

    沸かし水の方が、却って逆効果だなんて…orz

    ゼオライトと言うのは園芸用品で聞いた事があるような気がします。
    セシウムを吸着するのでしょうか?
    汲み置きの水にゼオライトを放り込んで効果があるならお手軽ですね。

    畑などに使用してもゼオライトの効果は期待できるのでしょうか?
    もしそうなら福島及び近隣県の農家には朗報ですね。

  4. さち より:

    ゼオライトがフィルタの役割をしてセシウムを吸着するので
    水をゼオライトでろ過するような感じで使用すると
    恐らくより効果的だと思います。

    原理上、畑に混ぜた場合は多少の作用はあると思いますが
    水のようにフィルタとして使用した場合に比べると
    やはりセシウムの吸着は少ないのではないかと思います。

    ただ、気を付けなくてはならないのは
    ゼオライトがセシウムを吸着しても
    そのセシウムの放射能が無くなる訳ではないということです。

    セシウムを吸着したゼオライトの回収ができないと
    「放射性物質が混じった土」という点では同じなので
    小さなゼオライトを土に混ぜることが
    土壌の浄化としてのセシウム除去に効果的かとなると
    また少し違ってくると思います。

  5. おっさ より:

    浄水器の活性炭のような使い方がよさそうですね。

    >ゼオライトがセシウムを吸着しても
    >セシウムの放射能が無くなる訳ではない

    この点が重要なのですね。
    土壌のセシウムがゼオライトに吸着されれば、作物が吸収する分が減るのかも…と思っていましたが…。
    確かに吸着済みのゼオライトを除去しなければ意味が無いですよね(^^;

    撒いたゼオライトを再び回収するんだったら、初めっから放射性物質を含んだ表土を取り除く方がずっと良さそうです><
    ナカナカ簡単で上手い手ってのは無いもんですねorz

    プルトニウムとストロンチウムの特性も記述されているのも嬉しかったです。

    生物的半減期がハンパなく長いのですね!
    これでは少ない量でも体内には入れたくありません><
    現状でどの物質がどれくらいの範囲で飛び散っているのかを知ることが出来ると良いのですが…。

    色々とお教えくださってありがとうございました。
    これからも頑張ってください^^

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